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ナンバンギセル


ナンバンギセル(Aeginetia indica)はハマウツボ科 Orobanchaceae ナンバンギセル属 Aeginetia に属し、ススキ・イネなどの単子葉植物の根に寄生する真正寄生(純寄生・完全寄生)植物です。 古来日本では思草とも呼ばれ、萬葉集の一首

道邊之ミチノヘノ 乎花我下之ヲハナカモトノ 思草オモヒクサ 今更尓何イマサラナニノ 物可将念モノカオモハム

にある思草はナンバンギセルのことだと考えられています。(尾花オバナ乎花ヲハナ はススキ Miscanthus sinensis のことです。)
ナンバンギセルの地上部はほぼ花柄のみで葉緑素をもたず、生存に必要な炭水化物などを宿主の植物から得ています。ふつう植物では光合成の場である葉緑体も核やミトコンドリアと同様に遺伝子・DNAを持ちますが、ナンバンギセルの葉緑体のDNAは縮退し、その光合成に関わる遺伝子も消失・無機能化しています。(Chenら 2020)。 さらにナンバンギセルは、その進化の過程で宿主である植物(おそらくススキあるいはその近縁にあるイネ科の祖先種)から遺伝子の一部(>0.2%)を水平伝播と呼ばれる現象によって受け継いだことも示されており(角ら 2018)、真正寄生植物として特異的な進化をとげています。

参考文献

  1. Jingfang Chen, Runxian Yu, Jinhong Dai, Ying Liu, Renchao Zhou (2020) The loss of photosynthesis pathway and genomic locations of the lost plastid genes in a holoparasitic plant Aeginetia indica. BMC Plant Biology 20:199 doi: 10.1186/s12870-020-02415-2
  2. Tomoyuki Kado, Hideki Innan (2018) Horizontal Gene Transfer in Five Parasite Plant Species in Orobanchaceae, Genome Biology and Evolution 10:3196–3210, doi: 10.1093/gbe/evy219
© 2022 Research Center for Integrative Evolutionary Science, SOKENDAI