カメの背側の甲羅は、背骨とろっ骨が構成要素になっていることをご存知でしたか?(そう、甲羅は脱げません。)これはつまり、彼らの腕(肩甲骨を含む)は胸腔の内側にあることも意味しています。我々ヒトを含むその他の四つ足動物とは正反対の位置関係です。
カメ類は腕や甲羅に限らず頭部なども変わった特徴を持っていて、こうしたことが原因で、カメの進化的系統関係に関しては長らく混乱が続いてきました。例えば、古くに登場したある意味で原始的な爬虫類の一群だと考える学説もありました。
私たちを中心とした国際研究グループがカメのゲノムDNAを解読して解析したところ、カメ類が古くに登場した爬虫類ではなく、ワニ類や鳥類などに次ぐ比較的最近出現した爬虫類の一群であるという説を強く支持ことが明らかになりました。
また、カメほど形態学的に奇抜な進化を遂げた動物であっても、ニワトリとの比較では発生砂時計モデルに従うことを明らかにしました。発生砂時計モデルが発生進化の法則性として非常に頑健であることを意味しています。
これ以外にも、実はカメによっては哺乳類のイヌを凌駕するほどの数の嗅覚受容体を持つことを明らかにしました。脊椎動物で嗅覚と言えば、哺乳類の右に出るものはないとこれまで考えられていただけに、驚き(かつ予想外)の発見でした。
ただ、これはカメ類が高い嗅ぎ分け能力を持ちうるということが遺伝的に示されただけであって、匂いの感度が高いということは意味しません(匂いの感度には嗅上皮の面積等が重要)。
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Nature Genetics, 45(6):701-706, 2013
Nature Genetics, 46, 526, 2014