猪鼻 真裕 助教

科学技術史・科学技術社会論

猪鼻真裕助教

猪鼻 真裕

助教

研究分野 科学技術史・科学技術社会論
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猪鼻真裕助教

 科学技術と社会を、切り分けないで、一体不可分のものとして捉えようとしています。イメージは難しいのですが、例えば、水面に浮いた油滴の粒々が、結合して大きなかたまりになったり、時に分離してそれぞれの油滴になったりするイメージでしょうか。イカダモという藻類は、複数の細胞が集まって群体を形成したり、離れたりします。現実には起きないですが、群体を作るときに細胞壁が溶けて混ざり合ってしまうイメージです。科学的なもの、もしくは技術的なものと社会的なものは、分離しているように見える場面もありますが、時に混じり合い、分けて考えることが非常に難しい場合もあります。  私はこれまで、日本の原子力発電システムの歴史研究をしてきました。原発システムも、物理的構造物単体として存在するのは非常に難しく、〈科学・技術・社会〉的なものの複合物だといえます。燃料となる濃縮ウランを手に入れるための国際協定、原子力技術者が研修を受けるための国際関係、国内電力体系に組み入れるための法的規制、誰が建設を許可するのか、誰が事故の補償をするのか、誰がお金を出して作るのか…。一度構築されたシステムは、発展し続けようとする運動量を持ち、時が経つにつれて風景のように変容していきます。対象は何でもよいのですが、システムが社会的に構成される部分に着目し、発展・変容していく動的な過程を記述しようとしています。

代表的な論文、著書等

  • 1.Inohana, M. (2025) Economic Rationality and International Humanitarianism: Ryōkichi Sagane’s Advocacy Regarding the Introduction of Foreign Nuclear Reactors to Japan. Berichte zur Wissenschaftsgeschichte / History of Science and Humanities (accepted)
  • 2.猪鼻 真裕 (2025) 「日本の原子力研究黎明期における日本学術会議内の意見の多様性と研究推進の内発的動機」『言語社会』 19:262-279
  • 3.猪鼻 真裕 (2024) 「日本原子力研究所原子炉研究所における1960年代の技術者教育」『技術と文明』 24(e2):1–14
  • 4.猪鼻 真裕 (2024) 「東京大学工学部原子力工学科の設立」『科学史研究』62(308):341–356