フェロモンと社会行動

昆虫の社会行動の多くはフェロモンにより制御されています。最も有名な例は、雌のカイコガが放出する性フェロモン bombykol で、他にもミツバチの女王蜂が産生する女王物質 9-ODA やトノサマバッタの集合フェロモン 4VA など、多くの昆虫で行動を制御するフェロモンが同定されています。フェロモン分子は昆虫が多様化するに従いそれぞれの系統で独自に獲得したものであり、その受容体遺伝子もそれぞれの系統で独自に進化したことが明らかになっています。


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コオロギの場合、雌雄の判別とそれに引き続く闘争行動もしくは求愛行動の解発の鍵となるフェロモンは、体表を覆う炭化水素分子であると考えられています。コオロギの社会行動を解発する体表炭化水素フェロモンの実態は未だ完全に解明されていませんが、当研究室ではフェロモンの完治に必要な嗅覚受容体遺伝子の網羅的解析や体表炭化水素フェロモンの合成に関わる遺伝子群の解析を通して、コオロギの社会行動を制御するフェロモンシステムの全容を明らかにしようとしています。

コオロギのフェロモンシステムの研究に加えて、ゴキブリ科昆虫の性フェロモンである periplanone の受容機構やその進化の解明にも精力的に取り組んでいます。

参考文献

  1. Tateishi K., Watanabe T. (co-first author), Nishino H., Mizunami M., Watanabe H.. (2022). Silencing the odorant receptor co-receptor impairs olfactory reception in a sensillum-specific manner in the cockroach. iScience. 25:104272.