コオロギ "神経遺伝学" の確立をめざして
脳を構成する神経回路網を理解するためには、特定の特徴を持つ神経細胞を選択的に標識し、その機能を調査することが必要です。当研究室では分子遺伝学的手法を取り入れて、コオロギ脳を理解しようとしています。
当研究室では、コオロギ野生型系統を整備し、コオロギの受精卵に遺伝子導入ベクターやトランスポゾン mRNA、CRISPR/Cas9 RNP複合体を顕微微量注入する実験系を確立しています。遺伝子導入をおこなう場合、まず PCR 法により目的とする遺伝子断片を増幅し、遺伝子導入ベクター(プラスミド DNA)を構築します。大腸菌で増幅した遺伝子導入ベクターを精製し、トランスポゾン mRNA とともに受精卵に顕微微量注入します。習熟すれば数時間の実験で数百個の受精卵に顕微微量注入することが可能です。受精卵を成虫まで育てて掛け合わせ、次世代の胚の中から下図のように遺伝子導入マーカーを発現するものを選抜し、系統化していきます。
現在、組織・細胞種特異的なプロモーターの探索や Gal4-UAS システムの実装など、コオロギ神経遺伝学に必要な実験ツールの構築・実装を進めています。
参考文献
- Watanabe T.*, Ugajin A., Aonuma H.. (2018). Immediate-early promoter-driven transgenic reporter system for neuroethological researches in a hemimetabolous insect. eNeuro. 5:e0061-18.2018.
- Watanabe T., Aonuma H.. (2013). Tissue-specific promoter usage and diverse splicing variants of the found in neurons; an ancestral Hu/ELAV-like RNA binding protein gene of insects, in a direct developing-insect Gryllus bimaculatus. Insect Molecular Biology. 23:26-41.